畳に付いたヘアカラーのシミは、時間との勝負です。
すぐに対処すれば落とせる可能性は高まりますが、素材や汚れの状態によっては、正しい方法で取り除かないと逆に色が定着したり畳を傷めてしまうこともあります。
本記事では、カラー剤の性質や畳の素材ごとの違いを踏まえた上で、実践的なシミの落とし方をわかりやすく解説します。
初期対応から頑固な汚れへの応用編まで、具体的な手順やコツを知りたい方に役立つ内容です。
汚れた畳を元の状態に近づけるために、ぜひ参考にしてください。
畳にカラー剤が付いたときの基本知識

ヘアカラーが畳に付着した場合、ただ拭くだけではなかなか落ちません。
ここではまず、落ちにくさの原因と素材ごとの特徴を知ることから始めましょう。
なぜ畳はヘアカラーのシミが落ちにくいのか?
畳は天然素材でできているため、液体を吸収しやすく、染料が繊維の奥まで浸透してしまうことがあります。
特にヘアカラーには酸化染料やアルカリ剤などの化学成分が含まれており、一度定着すると簡単には落とせません。
シミが時間とともに酸化・変色することで、より目立ちやすくなってしまうのも特徴です。
だからこそ、付着した直後の素早い対応が非常に重要です。
カラー剤の種類と畳への染み付きやすさ
ヘアカラー剤には「白髪染め」や「おしゃれ染め」、一時的な「カラートリートメント」など複数の種類があります。
一般的に白髪染めは色素が濃く、酸化染料が強いため畳への色移りも深刻になりがちです。
おしゃれ染めも発色を良くするためのアルカリ成分が含まれており、繊維を開かせて染み込みやすくしています。
一方、カラートリートメントは一時的な着色剤なので比較的落としやすい傾向にありますが、乾くと落ちにくくなる点には注意が必要です。
畳の素材によって変わる落とし方
畳は主に「い草」「和紙」「樹脂」といった素材でできており、それぞれ性質が異なります。
い草畳は天然素材ゆえに染み込みやすく、強い薬剤は変色や劣化の原因になります。
和紙畳は表面にコーティングが施されていることが多く、軽度の汚れなら拭き取りやすいのが特徴です。
樹脂畳は水拭きや洗剤に強いため、比較的扱いやすいですが、素材によっては薬剤との相性に注意が必要です。
素材を見極めたうえで、適切な方法を選ぶことがポイントです。
畳に付いたカラー剤の落とし方【基本編】
汚れが付いたばかりなら、家庭にあるもので十分に対応可能です。
ここでは基本的な3つの方法を順に紹介します。
1. 台所用中性洗剤で落とす手順とコツ
カラー剤が付着してすぐの段階であれば、中性洗剤を使った方法が最も手軽で効果的です。
中性洗剤は畳の素材を傷めにくく、油分や染料を浮かせて落とす作用があります。
布に洗剤を含ませてポンポンと押し当てるようにすると、繊維の中に入り込んだ汚れを浮き上がらせることができます。
仕上げに水で濡らした布で拭き取り、乾いた布で水分を吸い取ると効果的です。
何度か繰り返すことで色が薄くなります。
2. 除光液(ネイルリムーバー)を使う方法
中性洗剤で落ちない場合は、除光液に含まれるアセトンを活用する方法があります。
アセトンは染料を溶かす働きがあり、化粧品やペン汚れなどの除去にも使われます。
使い方は、コットンに除光液を含ませ、汚れの上に軽く当てて色を浮かせるだけ。
こすらずに少しずつ染料を移すようにすると畳を傷めにくいです。
使用後は湿らせた布で拭き取り、最後に乾いた布で水分をしっかり吸収させましょう。
換気をしながら作業することも忘れずに。
3. 消毒用アルコールでの対処法
除光液が手元にない場合や、においが気になるという方には消毒用アルコールを使うのもおすすめです。
アルコールには脱脂作用があり、染料を浮かせるのに効果があります。
使い方は除光液と同様で、コットンや布に含ませてポンポンと叩くように汚れを処理していきます。
素材にダメージを与えにくいため、い草畳にも比較的安心して使える方法です。
ただし、乾いた染料には効果が薄くなるため、できるだけ早めの使用が望まれます。
頑固なシミに!畳へのカラー剤の落とし方【応用編】

基本の洗浄法では落ちない場合は、より強力な方法を試す必要があります。
ここでは応用的なシミ抜きテクニックをご紹介します。
塩素系漂白剤を使うときの注意点
どうしても色素が残る場合は、塩素系漂白剤を使う方法があります。
ただし強力なため注意が必要です。
塩素系漂白剤には酸化力があり、染料そのものを分解する作用があります。
しかし同時に、畳の変色や繊維の劣化を引き起こすリスクもあるため、使い方を誤ると逆効果になりかねません。
必ず目立たない場所で試してから使用し、短時間で拭き取るようにしましょう。
手袋と換気の徹底も忘れないようにしてください。
酸素系漂白剤との違いと効果
塩素系と混同されがちなのが酸素系漂白剤ですが、作用の仕組みは異なります。
酸素系は過酸化水素などを使って汚れを分解し、塩素系に比べて素材への影響が穏やかです。
い草や和紙畳などデリケートな素材には、酸素系漂白剤のほうが適しています。
特に着色してから時間が経ってしまった場合、まず酸素系で様子を見るのが安全です。
頑固なシミでも、数回に分けて処理することで徐々に薄くすることが可能です。
色素が残った場合の「染み抜き裏ワザ」
一般的な方法でも取り切れない場合は、いくつかの裏ワザ的対処法があります。
たとえば、重曹と中性洗剤を混ぜたペーストを作り、汚れの上に乗せてしばらく置いてから拭き取る方法です。
また、オキシドールやクエン酸を使った中和作用を応用する手もあります。
ただし、いずれも畳の素材や状態によって結果が異なるため、必ず目立たない場所でテストしてから行いましょう。
過剰な処理を避けることが長持ちさせるポイントです。
畳を傷めずにカラー剤を落とすポイント
シミを落とすことばかりに気を取られると、畳自体を傷めてしまうことがあります。
正しい扱い方を押さえましょう。
擦らない・時間を置かないが基本
畳にヘアカラーが付いてしまったら、まず焦らず落ち着いて行動することが大切です。
ただし、絶対にしてはいけないのは「擦る」ことです。
繊維の奥まで染料を押し込んでしまい、逆にシミが広がる原因になります。
また、放置してしまうと酸化が進んで定着するため、付着してから短時間で対処するのがポイントです。
汚れが新しいほど、優しい方法でも十分に落とせる可能性が高まります。
使ってはいけないNG洗剤・道具
畳のシミ取りに使ってはいけないものもあります。
たとえば、研磨剤入りのクレンザーやメラミンスポンジは、畳表の繊維を削ってしまいかねません。
また、アンモニア系洗剤や強アルカリ性の薬品は変色や劣化を引き起こすおそれがあります。
金属製のブラシや固いタワシなども傷の原因になります。
畳は水分や化学成分に弱い素材ですので、穏やかで素材に優しい道具と洗剤を選びましょう。
カラー剤の汚れを予防するには?

汚れを落とすよりも、そもそも汚れない工夫をしておくほうが簡単で安全です。
予防対策は意外と手軽にできるものです。
ヘアカラー前の養生方法(新聞紙・ラップ・シート)
ヘアカラーを自宅で行う際は、作業前のひと手間が畳を守るカギになります。
最も手軽なのは新聞紙を敷く方法ですが、カラー剤が浸透しやすい点には注意が必要です。
その点、ラップや防水シートを使えば液体の染み込みを防げます。
100円ショップなどで手に入るヘアカラー専用マットも便利です。
畳全体を覆うのではなく、椅子や鏡の下など、特にカラー剤が飛びやすい場所を重点的にカバーするのが効果的です。
万が一に備えた道具の準備と使い方
養生していても、思わぬ飛び散りやこぼれが起こることはあります。
そんなときのために、中性洗剤やアルコール、使い古しの布、ゴム手袋などをあらかじめ用意しておきましょう。
すぐに対処できるよう、汚れに気づいた時点でこれらの道具が手元にあると安心です。
アルコールや除光液は気化しやすいため、キャップをしっかり閉めておくことも忘れずに。
事前の備えが、畳の寿命を守る第一歩です。
畳にカラー剤が落ちない場合の最終手段
あらゆる方法を試しても落ちない場合は、思い切った対応を考える必要があります。
無理にこすらず、別の選択肢を検討しましょう。
畳の張替え or カーペットでのカバー
シミが目立つ状態のままだと見栄えも悪く、気分も下がってしまいます。
そんなときは、畳の張替えを視野に入れるのも一つの手です。
部分的な表替えや裏返しが可能な場合もありますので、状態を確認してから検討しましょう。
ただ、張替えには費用もかかるため、すぐに行動に移せない場合は、カーペットやラグで上からカバーする方法も有効です。
インテリアとしても活用できます。
業者依頼する場合の目安料金と注意点
自分ではどうにもならないと感じたら、畳専門のクリーニング業者や表替え業者に相談してみましょう。
表替えの相場は一畳あたり5,000円~10,000円ほどが目安です。
ただし、畳の素材や地域、施工内容によって金額は前後します。
依頼前には複数の業者に見積もりを取り、対応実績や口コミも確認することが大切です。
また、業者によってはカラー剤の汚れには対応していない場合もあるので、事前の確認を忘れずに。
よくある質問(FAQ)
ここでは、畳にカラー剤が付いてしまったときに多く寄せられる疑問を簡潔に解決していきます。
Q. 白髪染めとおしゃれ染め、落とし方の違いは?
白髪染めは酸化染料の濃度が高く、より深く畳に染み込む傾向があります。
そのため、除去が難しくなることが多いです。
一方、おしゃれ染めは色素が薄めな場合もあり、早めの対応であれば比較的落としやすいこともあります。
ただし、どちらも共通して言えるのは「時間が経つほど落ちにくくなる」という点です。
染料の種類にかかわらず、迅速な対応が重要です。
Q. 時間が経って乾いたカラー剤でも落ちる?
完全に乾いてしまったカラー剤でも、ある程度落とすことは可能です。
ただし、汚れが酸化しきって定着している場合は、色素が残ることがあります。
そういった場合は、漂白剤や専用のシミ取り剤を使って段階的に薄くするしかありません。
また、畳の変色を防ぐためにも、一度に強い処理を行うのではなく、様子を見ながら少しずつ対応することが大切です。
Q. 色が落ちても変色が残る場合はどうすれば?
カラー剤の色素は落ちても、畳の繊維そのものが変色してしまうことがあります。
これは化学反応や日焼けによる影響が重なることで起こりやすく、完全に元に戻すのは難しいこともあります。
変色が気になる場合は、上から家具やカーペットで隠す、または思い切って畳を張り替えるのが現実的な対応です。
費用や手間とのバランスを考えて選びましょう。
まとめ
畳にカラー剤が付いてしまっても、慌てず正しい方法で対応すれば、元の状態に近づけることは可能です。
汚れの状態や畳の素材に応じて、適切な洗浄法を選ぶことが大切です。
中性洗剤やアルコール、除光液など、家庭にあるものでの初期対応が肝心で、時間が経ってしまった場合は漂白剤などの応用的な方法も検討しましょう。
また、日頃から予防策をとることで、トラブルそのものを未然に防げます。
最終的には、畳の張替えやプロの力を借りる選択肢も視野に入れて、無理のない対応を心がけてください。